Part8-1 @渋谷(東急ハンズ)
もりたが恋愛絡み・男絡みで手痛い思いをした場所を実際に巡りながら、つらい思い出を振り返っていく企画「東京のつらい場所」。今回の渋谷編では、飯田橋の彼とのデートでよく来ていたという東急ハンズを巡った後、彼から別れを告げられた場所へと向かいます。
(付き添い・記事編集:Ryota、2018年9月15日収録)
東急ハンズは激アツデートスポット
もりた(以下:M) さぁ、今回は渋谷です。渋谷は会社のセミナーとかで今でもたまに来る場所なんですが、そういうときはヒカリエ側にしか用事がなくて。
Ryota(以下:R) トラウマチックな場所はセンター街方面にあるわけだ。
M そうそう、当時はまだまだ若かったんで、センター街とか行っちゃうわけですよ。さぁ、えっさほっさとトラウマに向かっていきましょう。
R ははは(笑)。まずは東急ハンズに行くんだっけ。
M そうそう、激アツのデートスポットだったからね。無印良品もそうだけど、東急ハンズって「とりあえず行こう」って言って、まんべんなく回っていくのが楽しいスポットなんだよ。ほら、2人のうち片方だけが詳しいジャンルの場所だと、知識をひけらかしちゃって相手をイラっとさせてしまう、みたいな事態が起こり得るじゃないですか。東急ハンズは2人とも詳しくないものがたくさんあるから、お互い同じテンションで「これ何!?」って盛り上がれるんだよね。
R なるほど、あえて知らないものを見にいくわけだ。2人で木材売り場によく行ってたんでしょ?
M 上の階から順番に回っていくんだけど、その中でも滞在時間が一番長いのが木材売り場。使い道がわからない木材を見ながら「こういう風に使うんじゃない?」って盛り上がるのが楽しいわけです。
ハンズに突入!
R 東急ハンズに到着しましたよ。とりあえず上の階から見ていこうか。
M ううっ、ちょっと動悸がしてきた…。
R 大丈夫か(笑)。ここのハンズ、ほとんど来たことないからもりたに着いていくよ。
M マジで渋谷のハンズは迷路なんだよ。もうね、ここに関しては落ち着いてほしい。
R 落ち着いてほしいって何?
M まずフロアの案内板を見てほしいんですけど。
R あー、めちゃくちゃ複雑だ。
M 行きたい場所があったとしても、たどり着くまでにものすごい時間がかかるわけですよ。
R 果たして普通に木材コーナーにたどり着けるのか…。さて、一番上のフロアに着いたよ。
M ここ、どこだ…?
R もうすでに迷子フラグが(笑)。
M 最近は渋谷より池袋のハンズに行くことが多かったから…。あーっ、「人体模型、家に欲しいよね」って2人で話した! 「コートかけたいよね」って。
R 人体模型の肩に羽織らせる感じね。
M そう、あと透明の人体模型とか飾りたいとか、フラスコ欲しいとか。
R なんでそんなのが欲しいの(笑)?
M 2人とも中二病を患ってたから(笑)、こういうのいいよねって話してたんだ~。
R こっちはクラフトのコーナーだって。
M あー、裁ちバサミ、欲しいよね。
R え、なんで?
M 未練を裁ってくれるハサミが欲しい…。
R (笑)。
M クラフトコーナーはそんなに盛り上がらないんですよねー、私が手芸できちゃうタイプの人だから。
R もりた、手芸が得意なの?
M できるよ! なにしろ、もりた家の家訓は「自分で作れるものはなんでも作ろう」だから。ほら、もりた、消しゴムはんこが特技じゃん?
R 初耳だよ! そんなナンシー関的な趣味があるの(笑)?
M 嘘でしょ、知らないのー? もりたの消しゴムは有名ですよ。
R どこで有名なんだよ(笑)。
M 大学の友達はみんな知ってるよー?
R じゃあ俺が知ってるはずないじゃん(笑)。
M だって私、大学の学祭、消しゴムはんこで10万円を売り上げた女やで。
R すげぇ!
M 要らないもりたの知識がまた一つ増えたね。
R 今回、全然つらい場所感がないけど大丈夫かな(笑)?
M まだまだ序の口だからね。あ、こういうミニチュアとか好きなの。小学生の自由工作でミニチュアハウスを作ってたくらいだからね。うわー、あのタバコ屋ほしい!
R 確かにめっちゃよくできてるな!
M タバコのパッケージ、「HOPE」じゃなくて「HOLE」になってる! 「わかば」じゃなくて「わかさ」になってたりとか、うまく作ってるなぁ! ほしい!
R 目的が変わってきたな(笑)。
M まぁ、普通に今でも好きな場所だからね、「いいな!」って思うものはたくさんあるんですよねー。
お互いの価値観を確かめる場所
R ステーショナリーコーナーにも行く?
M ステーショナリーも、これまた盛り上がるんですよ。あっ、ちょうど手帳シーズンだ。手帳は何がいいかで一回彼と揉めたなぁ。
R なんで揉めるの?
M お互いに推しの手帳があるから。その当時、私は割とコンパクト派だったんですよ。鞄にスッと入れられるような手帳が好きだったの。なんなら自分で足せるから、リフィルでもいいやって感じ。やつは字が汚いから大きめの手帳が推しで、A5サイズくらいのものを使ってた。だからお互いに「リフィルはよくない! 真ん中にリングが来るから使いづらいでしょ」「リフィルを一旦外して、書いてからまたつければいいだけやん! それを言うならA5サイズの手帳なんて、持ち運びにくいだろ!」とか、そういう話をひたすらしてた。
R ある意味、お互いの価値観を確かめる場にもなっていたわけだ。
M あとは、こういう絵の具を見て「どの色が好きかなぁ」とか話したね。やつはブリリアントとかセルリアンとか、ブルー系が好きだった。紙もね、カードサイズの商品を見ながら、自分の名刺を作るならどの紙がいいかなとか、そういう話をして…、楽しかったなぁ、あの頃。なんか心にじわっとダメージ負った(笑)。
R ははは(笑)、めちゃくちゃ楽しかったのは伝わってきたよ。
M お次はボールペンコーナー! ボールペンも、どれがいいか論争が勃発しますよね。
R もりたは何派?
M 私はサラサ。インクがドバドバ出るのが好きだから。
R わかる! ゲルインク系は俺も好き。
M でもやつはジェットストリーム派なの。「サラサがいいのもわかるけど、これだけは譲れねぇ」って言ってた。こうやって色々話せるんだから、いいデートスポットだと思わない?
R 思うよ。あと、無印良品の時より、もりたがワナワナしてない。
M 無印良品はあいつの生活の中心にあるブランドだったから記憶に強く紐付いてるけど、ハンズはそうじゃないからそんなにワナワナしない。と言いつつも、やっぱり心はジクジクと痛むねぇ。
R 次はどっちに行く?
M インテリアコーナーだな。時計のところだけで無限に居られる。「どの時計が欲しい?」って話したなぁ。
R もりた的にはどの時計がいいの。
M うーん、悩ましいところだな。ぱっと見はこのセイコーのやつがいいなと思ったんだけど…。ガラスがある時計は反射で映りこむのが嫌なんだよね。
R 俺はね、秒針がスムーズに回るやつが好きじゃないんですよ。
M えー、スムーズに回る方がいいじゃん!
R 俺はカチカチ動くタイプの方が好き。スムーズに秒針が回るタイプは拒まれてる感じがするというか(笑)、可愛げがないと思っちゃう。
M 時計だとデジタルかアナログかも迷うよね。「目覚ましにするなら見やすいからデジタルがいいよね」とか。あっ、砂時計も好きだったな。あいつの家にも3分計と5分計があったわ…。次はアニバーサリーコーナー。バースデーカードとか見ながら、「どういうのなら喜ぶかなー」って考えちゃうんだよなー。…あれ、今日って何日?
R 9月15日。
M ここで重要なお知らせ。明日、彼の誕生日です。
R おぉ! なんか買ってく(笑)?
M いや、送れないから! …あーあ、彼は何してるんだろうなぁ。
R ははは、切なさがぶり返している(笑)。
M だって明日誕生日だよ? 誕生日に指輪買ったんだけどさ、違う、誕生日に付き合ったのか? 違う、その一週間前だよな、うん?
R 混乱するなよ(笑)。彼は明日で何歳になるんですか。
M えーっと、32歳です。ねぇ、26歳と32歳ならやり直せるんじゃね? ねぇねぇ、ダメかな!? もりたも大人になったよ? ねぇねぇ!
R まぁ…、もしかしたら可能性はあるかもしれない。
M いや、無いけどな。分かってるって、そんなことは。
R 可能性はあるかもしれない。
M …うん、調子乗ってごめん。
R 可能性はあるかもしれない。
M あの…、真顔やめて…。
R 可能性は、あるかもしれない。
M ごめんって! もう謝ってるじゃん! 許してよ(笑)!
R ははは(笑)、ごめんごめん、なんか急に調子乗り出したから面白くなっちゃって。でも、人生何があるかわからないから、もしかしたらそういうこともあり得るかもとは本当に思うよ。
M あったら良いけどねぇ。
木材コーナーに到着
R おっ、いよいよ木材売り場ですよ。
M 何に使うかよくわかんないこの感じがいいんだよ、木の匂いもいいよね。
R 確かにいい匂い! そして「お買い得です」って書いてあっても全然ピンとこないのがいいわけでしょ?
M そうそう。木材コーナーって、他のお客さんは明確な目的を持ってここへ来てるわけですよ。そんな中で、「何これ!?」とか「何に使うのが一番賢いかな」とか話すのが楽しいの。
R なるほどね。…これは何に使うんだろう?
M ほら、わかんないじゃん。「これとあれの差は何なんだろう」とか、そんな話で盛り上がる。
R こういうのを見ながらワーキャーしてたんだ。
M そうそう…。
R なんか露骨にテンション落ちてきてない(笑)?
M やっぱりだんだんつらい場所っぽくなって来たから。
R あんなにはしゃいでたのに。
M 前半のはしゃぎはフリだったわけですよ…。
R しみじみしてるなぁ(笑)。
M とりあえずこんなに楽しいデートをしてたというのは伝わった?
R 確かに、色々と見るものがあって楽しかった!
M ただこのデートプランには欠点があって、こういうものを「よくわからないけど楽しい!」って言ってくれる人とじゃないとつらいんだけどね。
R 彼は「楽しい!」って言ってくれる人だったんだね。そして、2人で会える機会が少なかったからこそ、些細なことでもとても楽しかった。
M そういうこと! よし、東急ハンズはここまでにして次に行こう。
R 次はパルコ?
M パルコの跡地に立ち寄って、ポムの樹かな。
R じゃあ、ここから2人が破局した日のデートコースをたどるわけだな。