東京のつらい場所

トラウマ巡りの旅。

Part10-2 居酒屋にて(後編)

もりたが恋愛絡み・男絡みで手痛い思いをした場所を実際に巡りながら、つらい思い出を振り返っていく企画「東京のつらい場所」。居酒屋でのアフタートークも終盤へ突入。約一年かけて過去の恋愛遍歴を辿ってきたこの企画を踏まえつつ、もりたのこれからについても語らいます。いよいよ完結。

(付き添い・記事編集:Ryota、2018年12月22日収録)

メタ視点と自分の気持ち

もりた(以下:M) うーん、私はこれからどうしたらいいんだろうね。もう、本気で人を好きになれないんじゃないかなって思っちゃう。

 

Ryota(以下:R) そうは言っても、勝手に好きになっちゃうものなんじゃないの。

 

M だけど、自分のことを疑ってたら、始まるものも始まらない気がしない?

 

R 自分の気持ちに対してメタな視点から見ちゃうわけだ。「本当に好きなの?」って疑ってしまう。

 

M そうそう。

 

R 最近、マキタスポーツさんの『一億総ツッコミ時代』を読んでるところなんだけど、日本人はみんな自分に対してメタになってるから、もっとベタに生きようって書いてあったよ。メタ視点をやめて、もっと夢中になったらいいよって。

 

M 難しい。仮に好きな人や気になる人ができたとして、何も考えずに突っ込んでいったらいいのかな。

 

R 突っ込んでいくっていうか…、自分の気持ちをちゃんと伝えればいいんじゃないの?

 

M 「メタ視点が入ってるから、私は自分の気持ちもよくわからないんです…」って言ったところで相手が困るだけでは?

 

R うーん。

 

M 何をもって確信すればいいんだろうね。これが恋なんだって。

 

R 胸のときめきに素直に従うとか?

 

M でもその、「あー、好き!」っていうのに従った結果がこれですよ。

 

R とはいえ、最初はやっぱり「あー、好き!」ってことから始まるんじゃないの。

 

M 飽きっぽいからさぁ。ときめきだけを頼りに行動しちゃうと、すぐに「やっぱり違ったな」ってなりそうだから、一旦待ったをかけたくなるよね。酒飲みとしては、酔ってる時のテンションっていうのもあるし。

 

R 「あー、好き!」からとりあえず始めて、様子を見ながらちょっとずつ好きになっていけばいいんじゃない? ゲームでいう“コンボが決まる”みたいな感じで、自分の中で「好き!」のコンボが決まって高得点な相手を見つけるとか(笑)。

 

M うーん、どうなのかな。流されてきた結果が今なわけで、それが失敗だったっていうのもあるからさ。

 

R いや、人に流されるんじゃなくて、自分の中の「好き!」とか「ええやん!」っていう感情にもっと流されたらいいのではって話だよ。お前がお前にもっと流されたほうがいいんじゃない?

 

M なるほど、自分に流されるのか。私って考えすぎなのかな。

 

R せっかく「好き!」って思ったのに、「本当に?」ってメタに入ると、途端に流れが止まるじゃん。

 

M 止まる止まる。

 

R もりたは自分の「好き!」という気持ちをせき止めちゃって、その上、他人からの好意には「これを拒んだらかわいそうだ」とか「断って仲悪くなりたくないから」って思ってしまってる。相手の気持ちに流されっぱなしじゃない?

 

M この前、会社の人に「誰とでも仲良くできてると思うけど、八方美人すぎるのも良くないんじゃないの」って言われた。それは自分にも思い当たるところがあって、やっぱり圧倒的に他人に嫌われたくないんですよ。

 

R そりゃできれば、誰とでも仲良くしたいよね。

 

M 自分に対してナイーブだから、ちょっとしたことで痛手を負うのも怖い。その延長線上から、自分の加減ができる範疇で「傷つく前に傷ついちゃえ!」ってなってしまうこともあるし…。自意識に殺されそうになっちゃうんだよ。

 

R 単純にいうと「自分にツッコミ入れないようにしましょう」なんだけどね。酔っ払った時は自制したほうがいいけど(笑)、シラフの時くらい、もうちょっと自分の勢いに任せるのがいいんじゃない? ちゃんとした判断ができる状態の上でなら、流れたい方に流れたほうがいい。もりたはちゃんとした判断ができない時にばっかり流されてるから。

 

M うーん、自分に自信がないからさー。「こっちを選んで大丈夫かなぁ」って心配になっちゃうんだよな。

 

R 失敗したくないんだ。全勝優勝したい?

 

M そうそう、負け試合したくない。たまには「してもいいや!」って時もあるけど、そこにまで至らないかな。

 

R もりたはなんでそんなに自信ないの?

 

M この前知り合いと、家族の話をしたのね。そしたら「もりたさんの話を聞いていると、お父さんはあなたのことを自分の分身のように思ってる」って言われたの。「だから、お父さんはあなたが実績を残したら自分のこととして自慢して、その一方で、自分が違うと思ったことをあなたがやったら全部否定してくる。自分の人生を生きるなら、お父さんから離れた方がいいよ」って。そう言われて、腹落ちしてしまったんだよね。

 

R なるほど。

 

M 父親は「あれはダメ、これはダメ」って言ってくるけど、「なんでダメなの?」って聞いてもそこに理由はないの。「俺がダメだからダメだ」って一方的に言われる。そういう発想をする人と20年以上接してきたから、気にしないようにしていても、どこかで「これでいいのかな」って考えに囚われてしまうんだと思う。

 

R うーん、それで自問自答に陥っちゃってるのか。もうちょっと自分の感情に素直に動いていいと思うんだけどなぁ。「これでいいのかな」っていうのは、相手との対話の中で調節していけばいいわけだし。

 

二人で一緒に進める相手と

M でも、怖いんだよ。予測できない方向に向かっちゃったりするのが…。

 

R そんなの、相手あってのことなんだから、予測できないことのほうが多いでしょ。

 

M いや、すごい傲慢な言い方するけど、私は大体、「こうすればこうなるだろう」ってハンドリングできるから。

 

R ほら、やっぱり一人相撲してるじゃん。

 

M そうだね…。

 

R 「自分がこうすれば、こうなるだろう」ってさ、言い方は悪いけど、相手のことを安く見積もってるじゃないですか。

 

M うん……、安く見積もってると思う。

 

R そのスタンスって、過去の彼氏たちにとってのもりたでもあるし、もりたにとっての飯田橋の彼でもあるよね。

 

M 確かに。

 

R 「私がこうすれば相手はこう動くだろう」って見積もってると、予想外の展開になったときに上手くハンドリングできなくて動けなくなっちゃう。それが不安だから、もりたは「一人で運転する自信がない…」って思ってる。でもさ、そもそもの話、それは二人で運転する乗り物なんだよ。

 

M そもそもね。

 

 舵を取れるのは自分の分だけ。相手も相手の舵を持ってて、お互いに「どうしようか」って話しながら進んでいくものじゃないのかな。もりただって、飯田橋の彼に「私はこうしたいよ」って言えば良かったって思ってるわけでしょ。

 

 うん。

 

R だから「こっち行ってみませんか?」とか「ここは危ないからやめときましょう」って会話をしながら、二人で進んでいけるような、そういう関係の相手ができればいいよね。自分一人で無理やりハンドル切ったら、隣に乗ってる人は遠心力で外に飛び出しちゃうよ(笑)。一人でハンドリングしようとしないでさ、二人で一緒に進もうって発想をしてみたらどうかなって思うんだけど……。

 

M おっしゃる通りだよ…。見て、このもりたの顔…。半分涙目。

 

R いや、なんか分かったような口を聞いてしまって申し訳ないんだけど…(笑)、これまでのもりたの話を聞いててそう思ったの。自信がなくなっちゃうのは、恋愛っていう二人乗りの乗り物を、無理に一人で運転しようとしてるからじゃないかなって。

 

M そうだね。

 

R だから今度は二人でハンドルを握って、「こっち行こうね」とか「あっち行こうね」って言い合いながら一緒に乗っていけば、あんまり事故らないんじゃないかな…というのが、「東京のつらい場所」を一緒に巡った僕からの、もりたへのエールです。

 

M やばい、結局泣かされてしまった。

 

R 僕の尻餅と共に、これをもりたに捧げます(笑)。

 

M ちょっとマジで泣いていい…ですか…。

 

R いいよ、泣け泣け…なんか俺も泣きそうになってきた(笑)。…もりたはいいやつだよ。そうやって、すごく悩んだり、考えたり、ムカついたり、落ち込んだりしてるやつが悪いわけないよ、ダメなわけない。もりたは頑張ろうとしてるよ。ただ、一人で頑張んなくていいから、二人で頑張れる相手を見つけなよ。

 

M めちゃめちゃ泣いてるんだけど…(笑)。今の話は自分の中で腑に落ちちゃったから…。次に付き合う人とは、一緒に走れるようにしていきたい。今までみたいに悩むこともあると思うけど、ちゃんとその人と向き合って、一緒に考えていきながら、いい結末を迎えたいな。

 

R そうなっていけるといいね。

 

M だから、飯田橋の彼の亡霊は消えないけどそれに負けたくないなあって。『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』ってタイトルの本、あるじゃん。なんか今までは「あいつ、今ごろパフェ食ってるよ」っていうことに対して「わかってはいるけどさぁ…」とうじうじしてたんだよね。これからは、本当にそうなれるかは分かんないけど、あいつがパフェ食ってることに腹立つときもあるかもしれないけど…、私は私で「本当に好きだな」って思える人と一緒に美味しいものを食べたいなって、思う。

 

R なるほど、一年近くやってきた「東京のつらい場所」は、そういう結論を迎えたかぁ。

 

M ……私、幸せになれるかなぁ?

 

R 俺が勝手に「幸せになれる!」と断言はできないけど(笑)、俺は、もりたが幸せになったらいいなと思うよ。「もりたがもりたなりの幸せを得られますように」とは、祈ってる。

 

M まぁ、未来のことは未来の私しか決めようがないし、どんなことがあるかもわからないじゃん? 今日の帰りに、急に車はねられて死ぬかもしれないし…。

 

R 急にネガティヴだな(笑)。

 

M 極端な話だけど、何があるかわかんないじゃん。だから、なるべく後悔しないようにしたいよね。期待しすぎてがっかりしたくない気持ちもあるけど、もう少しポジティブに期待してもいいのかなって、思えるようになりたい。なりたーい(笑)!

 

R いいね(笑)。将来どうなるかはわかんないけど、今、もりたがそういう風になりたいって思ってることを、ちゃんと記事にして残しておくよ。

 

M 頼んだ!

 

R 最後に改めて聞くけど、企画を通して、飯田橋って場所に対しての印象は変わった?

 

M 相変わらず「嫌だな」とか「行きたくないな」とは思う。だけど、気分が悪くなるような状態までにはなりたくない。つらい場所じゃなくて、苦手な場所くらいにしたい(笑)。

 

R 否応なしにつらい気持ちになってしまうんじゃなくて、うっすら「嫌だなー」くらいで止められる程度にね。

 

M そう、「つらい場所ではないよ」って言いたいな。すぐには言えないけど、いつになるかはわかんないけど、言いたい。

 

R いつか言える日が来るといいね…! では、以上で東京のつらい場所の収録を終わります! もりたさん、一年間お疲れ様でした!

 

M お疲れ様でした! 乾杯!

 

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