東京のつらい場所

トラウマ巡りの旅。

Part1-2 喫茶店にて(後編)

もりたが恋愛絡み・男絡みで手痛い思いをした場所を実際に巡りながら、つらい思い出を振り返っていく企画「東京のつらい場所」。打ち合わせの後編では「なんでこんなにつらいんだろう?」という話に。

(付き添い・記事編集:Ryota、2017年11月23日収録)

 

自分で選んだものへの執着と後悔

 

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Ryota(以下:R) つらい場所と言っても、全部つらかったわけじゃないんだね。そのときは良かったことが、後々つらくなってしまう。別れがあるっていう時点で、世の中の出来事は最終的につらくなるってことだと考えると、しんどいなぁ。

 

もりた(以下:M) そうそう。大人になって、なんでこんなにつらくなるんだろうって考えたら、昔より物に執着するようになったからだと思うんだよね。昔は割と、何か手放しても「別の物があるからいいや」って思ってた。友達と喧嘩別れしてそのまま会わなくなっても、「まぁいいや」みたいな。何かあれば縁があるだろうし、また別の人とも仲良くなるからと思ってたけど、この年齢になると、友達とか、仲良くなるような関係ってめったに増えないじゃん。どっちかっていうと減っていく一方なわけで。でも、自分の自由にできる範疇は広くて、いろんなことに対して選択肢が増えてはいる。その中から自分が選んだものには、それなりに選んだ理由っていうのがあるじゃん。そうすると、それに対して執着心が出てくるわけだよね。これからどんどん失っていくだけの人生の中、そうやって選んだものが自分の意図しないところで壊れちゃったり無くなっちゃったりすると「あ、ここで無くなっちゃうんだ。本当はこんな風にしたかったわけじゃないのに」って悲しくなる。そういう悲しみが増えて、つらくなるんじゃないかな。

 

R 選んだなりの執着かぁ、なるほどな。

 

M 選べるからこそ、惜しくなるよね。昔は選べないからAっていうものしか知らなくて、「まぁAが無くても世の中にはBっていうものもあるらしいからそっちの方がいいかも」って思ったりしてた。だけど、BもCも知ってるうえでAを選んでるからね。それがダメになっちゃったら、多少「やっぱりBのほうがよかったね」って言いつつも、「Aの良さってここだったじゃん」って、無くなってからその良さに気付くこともあるし。

 

R 「あっちを選べばよかった」っていう後悔より「こっちが無くなっちゃった」という悲しい気持ちの方が強い?

 

M 強い気がする。元々が割と人に合わせちゃう性格で、こっちが折れたほうが楽かなって思うことも多かったんだよね。でもそれだと、不満が溜まるわけですよ。「自分はこうじゃないって思ってたのに」って後々考えちゃうのがすごく嫌で、社会人になってからは「選ばないで後悔するよりは選んで後悔しましょう」っていう気持ちになったの。やらなくて後悔したら「あの時ああしておけばよかった」って言えるけど、結局は選ばなかった自分の責任じゃん。選んだら、「それによってこういうことは得られたよね」みたいに自分が納得できる理由は増える。

 

R そうやって自分の全責任として選び、それが全責任として潰えた結果、全責任としてつらさを負っているわけね。

 

M うん。つらさも、自分の責任として負ってるところがある。「ここは譲りたくないからもう無理、会わない」とか言いつつ、「でもやっぱり会いたかったな」って思うのは自分の責任によるつらさだから。でも最近は貰い事故みたいな、自分の責任外のつらいことも増えてきたんだよね。自分の予期せぬ起因で起きることは、自分の範疇ではコントロールできないじゃん。そのときの痛みがびっくりするくらい痛い(笑)。

 

R 自分が選んだものの後悔もあるし、自分起因じゃないことも増えてるのか。

 

M だから、この世はつらさしかない!

 

R (笑)。俺、そんなにつらかったことないなー。みんな、そんなにつらいのかな。

 

M いやー、私が考えすぎなんだろうなぁ。

 

R もりたの周りに同じようにつらそうな人っている?

 

M いないんじゃないかなぁ。みんな、「そこまで考えてない」って言うよね。

 

R 結構みんな、なんとなくで生きてる?

 

M うーん、「つらいなって思うことはあるけど、お前ほど難しく考えて生きてないよ」って言われる。「自分で自分を苦しめてるね」って。まぁ、その通りだと思うし(笑)。

 

R でも、もりたとしては納得できないと嫌なんだよね。自分で選んだなりの理由や直感があって納得したいんだけど、それがなくなったらちゃんと選んだ分だけ傷ついちゃう。

 

M 例えば、書ければ何でもいいって買ったボールペンと、書きやすさを考えて選んだボールペンがあったときに、どっちが壊れた時のほうがショックですかっていったら後者だよね。全部に対してそういう生き方をし過ぎなんだと思う。

 

R そうやって選んだ分、うまくいかなかった後悔が重くなってくるんだ。

 

M そうだね。せっかく自分で選んだんだからうまくいくように、その時点ではベストを尽くしているつもりなんだけど、そうならなかったことの方が多いよ。自分のできない範疇のことはあるにせよ、もっとうまくいくように精度を高めるためにできたことはあったんじゃないかって、考えればいろいろ出てくるよね。あの時、ああしておけばよかったっていう後悔はあるかもしれない。考えすぎなんだろうね…。

 

付き合う=終わりの始まり

 

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M あとさ、つらくなると詩が書けるじゃんって思っちゃうんだよね。詩を書きたいから傷つきに行くこともあるし。

 

R ネタになるからって、自らつらくなりにいくってしんどくない?

 

M しんどいよ。こういう生き方してたらさ、そろそろ女に刺されて死にそうな気がするから、ちょっと危ないよね。男に刺されて死ぬ分には自分の責任だからいいけどさ。

 

R そこは責任として腹くくってるのがスゴい(笑)。

 

M 一回殺されかけた時に思ったもん。殺されることもあるんだって。ニュースとかでたまに痴情のもつれとかってあるじゃん。ストーカーが一方的にっていうパターンもあるけど、そうじゃなかったら、もしかしたら本人が意識していないどこかで何かしらあったのかもしれないなって思うよ。もちろん、そういうことをする相手が一番悪いけど。私は少なくとも何か起きてもおかしくないことをしてるから、「責任は負わなきゃいけないな!」と思って。 

 

R そういう時にさ、相手の責任のことは考えないの? 相手も悪いとは思わない?

 

M 思うよ、思うけどそれを防ぐための術もあったはずだから…。

 

R そこは、自分にも責任があると。

 

M 痴漢とか、明らかに一方的なやつは向こうの責任だけど、そうじゃなければ、気を持たせるようなことを自分がなんかしてたんだろうなとか、考えるよね。

 

R しんどいなぁ。

 

M なんで自分でもこんなしんどい生き方をしてるんだろうって思うけど、もうそれで25年間生きてきちゃったからさ。なんでそんなに、つらい生き方しかできないんだろうね。

 

R つらい生き方っていうか、考え方? 多分同じような経験をしていてもつらくない人もいると思う。

 

M 全然いるでしょ。そっちの方が圧倒的多数でしょ。

 

R きっと思考回路がそうなってるんだろうから、結構大変だよね。考えてない人が考えるようになるというのは起こりえるけど、考えている人が考えないようになるのは、基本的にないじゃないですか。でも、もりたは考えちゃう人だから、ここから考え方を変えるのは無理だよね。

 

M 無理(笑)!

 

R たぶんすごく幸せな時期でも、気分が落ち込むとき、あるでしょ?

 

M うん、だってさ、「恋愛なんて付き合った瞬間が終わりでしょ」って思っちゃうんだよね。その瞬間がすごくハッピーでも、あとは別れるだけだろうなって。もちろんそうじゃないこともあるかもだけど。

 

R 付き合った時点で、終わりの始まりなんだ。

 

M そうそう、「結婚がゴールじゃない」ってよく言うじゃん。「そこからの人生も続いていくわけで」って。そういうのと一緒だよね。付き合うのが終わりでしょ。あとは時が流れていって、いつか別れて終わりだよって。

 

R でも長く続く努力はするわけでしょ?

 

M もちろん。

 

R でも、「この人とは別れるだろうなぁ」と思ってるの?

 

M 大体思わない? 割とすぐ思っちゃうんだけど。

 

R 今25歳で、周りに結婚してる人もいるかもしれないけど、結婚するかもっていう想定は無いの?

 

M 今まで付き合った人では無かったなー。ひとりだけいたけど。それは飯田橋の彼なんだけど。

 

R あー、そこがピークで一番よかったんだ。

 

M あいつでこじれた可能性は高い。

 

R そこが元凶なんだ。やっぱり飯田橋行かないとダメだな。飯田橋を平気にする。

 

M 飯田橋は絶対行きますよ。飯田橋サーティーワンでアイス食べよう。