東京のつらい場所

トラウマ巡りの旅。

Part8-3 @渋谷(ポムの樹~渋谷駅)

もりたが恋愛絡み・男絡みで手痛い思いをした場所を実際に巡りながら、つらい思い出を振り返っていく企画「東京のつらい場所」。渋谷の「ポムの樹」でオムライスを食べながら、“飯田橋の彼”に別れを告げられた時のことを振り返ります。渋谷編最終回。

(付き添い・記事編集:Ryota、2018年9月15日収録)

 

もりた、食中に振られる

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Ryota(以下:R) どういうタイミングで、別れを切り出されたの?

 

もりた(以下:M) 彼がオムライスを食べ終わってから。私のはまだ3分の1ぐらい残ってた。

 

R うわー、それは最低だ(笑)! せめてこっちも食べ終わってからにしてほしいよね。

 

M あいつの言いたいタイミングで言われましたよ。私が「最近は大学でこういうことがあってね」とか、いつもの調子でペラペラ喋ってたら「あのさ…」って彼に言われて。「何?」「あのさ…、君とは惰性で付き合ってたと思うんだよね」「…え?」「だからさぁ、申し訳ないんだけど、友達に戻りたいなと思って」。いきなりすぎて理解が追いつかない。こっちは今までオムライスに集中してたわけですから。

 

R 食前食後ではなく、食中に振られたのね(笑)。

 

M 「他に好きな人ができたとか、そういうのじゃないんだ。俺が今、恋人のこととかちゃんと考えられる状況じゃないから、友達に戻りたい」だってさ。まぁ次の日、ヤツのFacebookのステータスが「交際中」に変わるんですけどねー!

 

R 面白いけど、その件は後で話そう(笑)。別れを切り出された時のもりたは、どういうリアクションだったの。

 

M 「そっか…、わかった」って。

 

R 受け入れたんだ。

 

M そんなふうに言うってことは、こっちが何を言ってももう無理なんだなと思って。すがったところで惨めになるだけだからね。泣きそうで視界がにじむんですけど、堪えて、「わかった、じゃあ別れよう。今までありがとう。指輪、返すね。あと鍵も返す」。

 

R その場で返したの?

 

M そう。指輪もスッと外して、「ありがとう」って言いながら返した。「俺の部屋に荷物が残ってるけどどうする? 取りに来る?」って言われたけど、会ったらまた言いたくないことを言っちゃいそうだから、「あなたの家に置いてある私物は、もう全部捨ててください」って。

 

R そっか。…オムライス美味しい?

 

M …美味しい。

 

R 当時食べたのもこれだった?

 

M この味だった気がする。美味しいけど…、つらいなぁ。普通さぁ、別れ話をオムライス食べてる途中にします? 帰り道でいいじゃん! …一刻も早く別れたかったのかなぁ。もう、ゴメンとしか言えないですよ。私が悪かった。

 

R もりたは自分で、どこが悪かったと思ってるの?

 

M メンヘラなところ。

 

R ははは(笑)。

 

M  最初は「お互いやりたいことをやりながら付き合える関係がいいよね」って許していたはずなのに、それを今更、付き合って何年も経ってから「やっぱり嫌だ」って言われるのは、彼からしたら縛られる感じがするでしょ? 自由にやりたい彼に対して両手放しで喜べなくなった時点で、ダメだったんだよ。

 

R うまく距離を保ちながら付き合っていこうと言ってたのに、もりたがその境界線を越えちゃったわけだ。

 

M 自由で構わないんだけど、「こんなにないがしろにされるんだったら付き合ってる意味ないな」って思っちゃったんだよね。

 

決定的なすれ違い

M …あ。

 

R どうした?

 

M いま思い出したんだけど、彼が別れたいって思った決め手、もしかしたらあれだったのかな…。

 

R 何?

 

M その当時、彼は大学3年になる直前だったんだけど「実は休学しようと思ってる」って言いだしたんだよね。「別に何か目的があるわけじゃないけど、今のまま大学に通っててもあんまり意味ないから、学業を一旦ストップして考えたいんだよね」って。

 

R 今後の身の振り方を見直したいと。

 

M 私、「ちょっと待って」って言っちゃったんだよね。ほら、彼って一度社会人をやってから大学に入り直した人でしょ? それで特に目的もなく休学するっていうことに、私はあんまり必要性を感じられなかった。お金もそれなりにかかるわけだしね。「そういう意味の見出せないことに対して、私はあんまり手放しでは賛成できない」って話をした。

 

R 彼が人生の選択をしようとしているところに、もりたは待ったをかけちゃったんだな。それで「お互い好きなようにやっていこうって言ってたのに…」と、彼が思ったかもしれない。

 

M 「こいつとは決定的に合わないな」と思われた可能性はあるね。

 

R その話をしたのもポムの樹

 

M そう。店に来る道すがらで「休学したい」って言われて、ポムの樹に着いてから「さっきの話なんだけどさ…、私は賛成できないな」って伝えた。

 

R それを聞いて「こいつとは合わない」と思った彼は、別れを決断した…。

 

M うわ、そういう流れだったのか…?

 

R あくまで可能性だけど、あり得る話だよな。惰性で付き合ってても、一緒にいて居心地がいいならまだよかった。でも、こいつは俺の身の振り方に今後も口出ししてくるかもしれない…、それなら、これ以上一緒にいる意味ないなって考えるのは自然かも。

 

M その前からサークルの件であれこれ文句も言ってたしね…。えー、じゃあもりたも悪いんじゃん…。

 

R どっちが悪いっていう話でもないんだよな…。すごく合ってるつもりでいたんだけど、実は決定的に合ってないポイントがあって、それがとうとう露呈しちゃった。

 

M そうやって我々は別れを告げたのです…。別れちゃったんだなー、悲しいことに。

 

R 別れちゃったねー、悲しいことにね。

 

M ずっとさ、「どうしてあんなことになっちゃったんだろう?」と思っていたけど、今日ちょっと絵解きができて、ほんの少しわかった気がした。自分の反省点が見えるのは素晴らしいことだね。でも…、もしもさぁ…、彼の休学に賛成してたら、私たちってまだ付き合ってたのかな。

 

R うーん、休学してからの彼の行動によるけど、我慢しても我慢しても、どこかのタイミングでもりたは彼の判断に口出ししちゃったんじゃないかな。

 

M そうだよね…。あそこで別れなかったとしても、遅かれ早かれダメになってたんだろうなとは思う。

 

R もりたはこの企画の最初からずっと、飯田橋の彼に対して「ちゃんと言いたいけど言えなかった」「はっきり怒れなかった」って悔やんでたじゃん? でも逆にいえば、彼はうるさく言わないもりただからこそ付き合ってたんじゃないかな。そして、もりたが自分の気持ちをちゃんと伝えられなかったのは、言えば言うほど、彼の気持ちが離れていくということがわかってたから…?

 

M …うん、たぶんそういう感じだったんだと思う。

 

R いろんなことを言えないままで別れたから、今のもりたとしてはスッキリしてないんだけど、そうしないと彼と一緒にいれなかったんだよね、きっと。

 

M やっぱり、彼が「さっぱりしてる君が好き」って言ってくれた、そういう私でいたかったんだよ。

 

R 自分の気持ちをはっきりぶつけてたら、飯田橋の彼とはもっと早く別れてたのかな。

 

M そうかもしれないし、逆にぶつかり合ったことでお互いのことがもっと理解できたかもしれない。もしもの話をしてもよくないと思うから、そういうことは考えないようにしてるけどね。最後くらいはガツンと言ってやればよかったとも思うけど、その反面、彼が好きって言ってくれてた私のままで別れたかったんだよなぁ。

 

R その結果、物分かりよく別れを受け入れたと。

 

M そう。だってもう、二度と会えないかもしれないんだよ。その最後の記憶が「嫌な女だった」っていうのはつらい。どうせ記憶に残るなら、いい記憶でありたいじゃん。その結果、自分で自分に傷を作ったりするんだけどね。悲しいな。どっちが悪いとかじゃないから。

 

R うん、2人とも譲れない部分が合わなかっただけで、どっちが悪者って話じゃない。どっちも悪くないからこそ、引きずってしまうのかもな。

 

M 彼には幸せでいて欲しいけどね…。詩人の最果タヒさんが「わたしをすきなひとが、わたしに関係のないところで、わたしのことをすきなまんまで、わたし以外のだれかにしあわせにしてもらえたらいいのに。わたしのことをすきなまんまで」っていう詩を書いてるんだけど、そういう心境。…さて、オムライスも食べ終わったし、色めき立つセンター街を抜けて帰りますか。

 

最後のデートの終わり

R 帰り道はどうだったの?

 

M 「今までいろいろありがとね」と言った気もするけど、あんまり記憶がない。「気まずいな…」とは思ってたかな。気まずい。どうしたらいいかわからない。でも、もう終わりだってことも、ここで別れてしまったら最後なんだろうなってこともわかってるわけです。

 

R このまま、会うことも無くなるんだろうな、と。

 

M そうそう。「部屋に置いてる荷物は捨てていい」って言っちゃったから、次に会うための口実もない。思い出話はしたと思うけど淡々とした感じだったな。もう手をつなぐわけでもなく、何をするわけでもなく。最後くらいは、ちゃんとあんまり迷惑かけないように過ごしたかったから。

 

R いい思い出で終わりたかったんだもんね。

 

M 「少しでもいい思い出のままで別れて、最初の頃のようにとはいかなくても、ちゃんと友達に戻りたいな」って思ってた。

 

R でも友達には戻れなかった。

 

M だって、連絡しても返してくれないし。

 

R で、別れた翌日、彼のFacebookのステータスが「交際中」になってたんでしょ?

 

M まぁ。それは何年か後に知ったんですけどね…。それ聞いて「いやいや、お前やっぱり他に女がいたんやないかーい!」って心の中で盛大につっこんだ(笑)。「別れた次の日から『交際中』になるってことは、二股やないかーい!」って。

 

R まぁ、確実に付き合ってる時期は被ってるよな。

 

M しかも「いつから交際してるの?」って聞いてるコメントに、彼が「実は結構前からですよ」って返してて、「はーっ!? なにが『他に好きな人ができたとか、そういうのじゃない』だよ! なにが『俺が今、恋人のこととかちゃんと考えられる状況じゃない』だよ! 私と付き合ってた時はステータス『独身』にしてたやんけ!」とは思った。

 

R 後ほどそんなにブチギレするとは知る由も無く(笑)、もりたは「友達のままでいたいな」と思いながら、渋谷駅に向かったわけだ。

 

M 彼は地下鉄で、私は京王線で帰るから、ハチ公のところで「もういいよ、ここで」って言ったの。でも彼が「改札まで送らせてよ、最後だしさ」って言うから、上りのエスカレーターに乗って、彼の後ろに立って「もうこの背中を見ることもないんだろうなー」とか考えてたら、京王線の改札にすんなり到着しちゃって。

 

R 別れ間際、最後にどんな話をしたか覚えてる?

 

M 「今まで本当に楽しかったし、友達に戻れるなら戻りたいし…。だからさぁ…、最後にわがまま言っていい? 抱きしめて欲しい」。そう言って、ハグしてもらった。「もう大丈夫。ありがとう。じゃあね」って言って、改札の前で別れたんだけど、そのあと満員電車でつり革につかまってたら、堪えてた涙がポロポロ出てきて、目の前の席に座ってたおじさんがビビったのか、席を譲ってくれて…。そのままワンワン泣き続けて、途中でビール買って、飲みながらまたワンワン泣いて、家に帰ったというのが、最後のデートの結末…。

 

R …えーっと、ハグしようか(笑)?

 

M 嫌だ! ハグするならイケメンがいい!!!

 

R わかった、やめとこう(笑)! さて今回で全部聞ききったから、次回はいよいよ最終章だよ。飯田橋行けそう?

 

M いや、もちろん行きますよ。行きますけど、体調不良のため当日ドタキャンする可能性はある!

 

R ダメだよ(笑)、その時はすぐリスケするからな!

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