東京のつらい場所

トラウマ巡りの旅。

Part6-1 @東京スカイツリー(登るまで)

もりたが恋愛絡み・男絡みで手痛い思いをした場所を実際に巡りながら、つらい思い出を振り返っていく企画「東京のつらい場所」。今回訪れた東京スカイツリーも、“飯田橋の彼”との因縁の場所。もりたが長らくスカイツリー登頂を避け続けていた理由とは…?

(付き添い・記事編集:Ryota、2018年5月19日収録)

 

「10年後に登ろうね」

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もりた(以下:M) いや~、来ちゃいましたね、スカイツリー編ですよ。

 

Ryota(以下:R) 来ちゃったね。

 

M 今朝、スカイツリーに登ることを考えたらちょっと体調悪くなっちゃった。本当に、スカイツリーは因縁の場所なんですよね~。

 

R 飯田橋の彼と「スカイツリーが完成したら行こうね」って約束してたんでしょ?

 

M 彼と付き合ってた時は、まだスカイツリーが建設されている途中だったんだよね。元々高いところに登るのが好きな我々でしたから、もちろん完成したら登ろうって話になるわけですよ。

 

R なるほど。

 

M で、スカイツリーが完成して、いよいよ登りに行くことになったんだけど、その頃って、彼がサークルばっかり優先する件で揉めてた時期なんですよね。有楽町~東京駅編の時に、彼が女の子を家に泊めたって話したでしょ?

 

R 彼が酔っぱらった女の子を仕方なく家に泊めて、その件でちょっと揉めたんだよね。

 

M それそれ。その次の週にスカイツリー行く約束してたんだよ。平日だったんだけど私はバイトが無くて、彼も予定を空けてくれてたから、学校が終わった後に押上駅で集合することになってたの。なのに、私が約束の10分前くらいに駅に着いた瞬間、彼から「ごめん、サークルが長引いてて、2時間くらい遅れる」って連絡があって。

 

R 出た! お決まりのパターンだ。

 

M そこから押上のベンチで2時間ぼーっと待ってたのね。

 

R それはちゃんと2時間以内で来た?

 

M 2時間で来たよ。一応走ってきた(笑)。サークルのことで揉めたばっかりだから、今回はちゃんと文句を言おうと思ったんだよ。でも、その前の年のクリスマスにプレゼントした手編みのマフラーを首に巻いて「待ったよね、ごめんね!」って駆け寄ってきた彼を見て、許しちゃいました。

 

R 「可愛いヤツめ」ってなったんだ。

 

M 「まぁ、私、愛されてるからいいかな」って。私、チョロかったな(笑)。

 

R それはチョロいなぁ(笑)。ちょっと待って、それってディズニーランドに行く待ち合わせで3時間遅刻される前でしょ?

 

M そう、スカイツリーが11月で、ディズニーランドが12月。

 

R 時系列的には「女の子を家に上げた」→「スカイツリーに2時間遅刻」→「ディズニーランドに3時間遅刻」なわけだ。

 

M 徐々に遅刻する時間が伸びてる。

 

R なるほど、反省の色がないね(笑)。

 

M で、2時間遅れでやっとスカイツリーに登れると思ったんだけど、完成してまだ半年も経ってない頃だったから、めちゃくちゃ混んでて。チケットカウンターに行ったら「2時間後くらい後じゃないと入れません」って言われたのね、その時は、私もまだ実家暮らしで門限があったから、そんなに待ってられないということで、結局登るのは断念。

 

R うわ、結果的に、遅刻した彼氏を2時間待っただけかよ…。

 

M ちょっとソラマチをぶらっと回ったけどね~。外からライトアップされているスカイツリーを見上げて、彼が買ってくれたホットチョコレートを飲みながら「きれいだね」って言ったりして。「10年後ならきっと空いてるから、またその頃に登りに来ようね」って彼が言ったんですよ。

 

R 10年後まで見据えた関係だと、暗に言ってくれたわけだ。えーっと、「10年後に登りに来ようね」って言ってから何年くらいで別れたんでしたっけ。

 

M それから半年足らずで2人の関係は終焉を迎え、「10年後なら一緒に登れるね」という言葉の呪縛によって、私はスカイツリーに登ることができなくなってしまったわけです…。その後も何度かスカイツリーの下まで来ることはあったけど、1回も登らなかった。なぜなら彼と10年後に登る約束をしたから…。

 

R それは彼と復縁する可能性を考えて登らなかったのか、近づくと思い出すからなのか、どういう意識で避けてたの?

 

M うーん、まぁ、復縁する可能性はないと思ってたけど、10年後に連絡とろうかなとは正直思ってた。10年経てば普通に友達として話せるんじゃないかなって。

 

R 「あの頃、約束したしさ、まぁお互い状況が変わっているとはいえ、せっかくだから登ろうよ」ってこと?

 

M 「だから、会おうよ」って。

 

R 会う口実?

 

M まぁ、会う口実。

 

R 10年越しの?

 

M そう、

 

R それは…、しんどいなぁ(笑)。

 

M まぁ、未練がましいよね。自分でも「登れよ」って思うよ(笑)。

 

R でも登らなかったわけだ。

 

M ずるずるとごまかしてたね。地方にいる友達が東京に遊びに来ると「スカイツリーに行きたい」って言うから、その度に来てはいるんだけど。

 

R 友達から「スカイツリー行こう」って言われて「いいよ」って応えるわけじゃん? で、スカイツリーの下までは来て…、そのあとはどうするの? まさか友達だけ登らせるとか…

 

M そんなことしないよ(笑)! ソラマチを巡ったりとか、浅草・合羽橋に行くプランを混ぜ込んで、「ここはあくまで買い物をする場所から、登らない」って言い切る。「やっぱり登るんだったら東京タワーだと思うんだよね~」とか。

 

R ははは(笑)、なるほどなぁ。

 

M 「スカイツリーは見るものだから! ここはソラマチで買い物楽しむような場所!」って。

 

R そうやって数年間、友達と遊びに来ることはあっても登るのは避けてたと。

 

M 登らずとも近くに来るだけで、心が削られる音がしてたからね。「うわっ…、10年後まであと7年…」って思ったりして。

 

R 10年後の約束のために、耐えたわけだ。

 

「呪いを解きに行こうよ」

M そういうわけで去年までずっと登らなかったんですよね。別れたのが2012年だから…、5・6年間くらい。

 

R でも、登るきっかけが訪れたんでしょ。

 

M そう! それはRyotaさんと「東京のつらい場所」をやりましょうって言い始めてた頃ですよ。その時は、企画のゴールをスカイツリーにしようって言ってたでしょ。ラストにスカイツリーに登ったら、呪縛も解けて最高だねって。

 

R あー、この企画を本格的に始める前に、「こういうドキュメンタリーやったら面白いよね」って話してた頃。

 

M その話をしたすぐ後に、呪いを解きに行ってしまったんですよ。

 

R どういう経緯で登ることになったの?

 

M 一瞬「付き合いたいな」と思ってたけど、別にどうにもならなかったお兄さんと行ったわけなんだけど。

 

R そのお兄さんは何関係で知り合った人?

 

M そのお兄さんは…あいつは何関係だ…?

 

R ははは(笑)。

 

M あー、マッチングアプリで知り合ったんだな。それで、普通に仲のいいお友達になったんですよ。本当に気が合ったから、毎週会ってるような時期もあって、「こんなに仲いいならさ、付き合っちゃったほうがよくない?」って言ったの。

 

R お、こっちから切り出しましたか。

 

M でも、お兄さんから「やっぱり恋愛対象としては考えられない」って言われまして…。その後も会う約束はしてたんだけど、「当分会うのを控えたい」って言われて「これは疎遠にされて終わったな…」って思った。私は友達を続けられると思ったけど、そうじゃなかったんだなって。

 

R それでもう、この人と今後の関係はないなと悟った。

 

M むしろ、一周回ってイラっとしちゃったかな。脈が無いとは思ってたけど、私は正面切って言ったのに、向こうはLINEで返事を済ませてきて。不誠実じゃん。私はそういうの超嫌いだから…。

 

R それで嫌になっちゃったんだ。

 

M 「はいはい、もういいです」って疎遠になって、半年くらい経ったんだけど、ある日、向こうから「会えないって僕から言ったくせになんだけどさぁ、やっぱり仲良くしたいから飲みに行かない?」って言われて、飲みに行って。

 

R それ、相手はどういう心境の変化だったの?

 

M 「やっぱり気が合う友達だし、あんな形で終わりたくないなと思って」って言われた。「お前は本当に自分勝手だな!」って思ったけど、それから何回か妙にデートっぽいことをしたんだよねぇ…。で、「今日暇? 百合展をやってるから一緒に観に行かない?」って誘われたから行ってみたら、彼が一眼レフのカメラを持って現れて「今日さ、写真撮りに行きたいから百合展を観終わったら、スカイツリーに登らない?」って言われて。

 

R 向こうは、元カレと「10年経ったら…」っていう約束したのは知ってたの?

 

M うっすら話してたとは思うけど。

 

R 彼もなんとなくスカイツリーの因縁の件は知ってるわけだ。

 

M 「前も言ったけど、私さぁ、スカイツリーに行けない呪いをかけられてるから」って言ったら、彼が「じゃあ、僕と一緒に呪いを解きに行こうよ」って言ってくれて。

 

R おー、かっこいいこと言うじゃん!

 

M 言うことはかっこいいんだよなー。別にいい奴じゃないけど(笑)。

 

R ひどいな(笑)。…と、話している間に、エスカレーターのところまで来ましたよ。いよいよスカイツリーに登ります!

 

M うわっ、まだ心の準備が…。

 

R いや、もう呪いは解けたんでしょ(笑)。

 

M 解けたとはいえ、つらいもんはつらいよ(笑)。

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