東京のつらい場所

トラウマ巡りの旅。

Part2-3 @新宿(東京都庁の展望台・後編)

もりたが恋愛絡み・男絡みで手痛い思いをした場所を実際に巡りながら、つらい思い出を振り返っていく企画「東京のつらい場所」。東京都庁の展望台の喫煙室で、もりたがたまに見るという悪夢について話し始めます。新宿編最終回。

(付き添い・記事編集:Ryota、2017年11月23日収録)

 

悪夢を見た朝は

 

Ryota(以下:R) 今日は企画の一回目で、新宿を回ったけどどうだった?

 

もりた(以下:M) やっぱり飯田橋の彼は強い。あいつ強すぎ。

 

R 精神的につらいところあった?

 

M あるでしょ…。鉛を抱えてる気分で「うっ」ってなる。「あっ、好き」って。でも、「じゃあ、もう一回付き合うの?」って言われたら、うーん、実際は違うかもしれないけど、良かった思い出は美化されていくじゃん。今だったらもうちょっと色々言えると思うし。あの頃は絶対、あの人に怒れなかったから。時々、彼が「ごめん」とか謝ってくる夢を見るんだけど、そのときも怒れない。自分では夢だってわかってるから、何を言ってもいいはずなのに、顔を見ると言えなくなっちゃう。

 

R その夢はよく見るの?

 

M この半年位は見てないかな。でも年に一回以上は絶対見る。そのときは「私、いま、本当にしんどいんだな」って思うよ。

 

R しんどい時期に、それに引っ張られてつらい夢を見ちゃうんだ。

 

M なんでそんな夢見るんだろうと思うけど…。あの人に対しては怒れないんだろうね。東京駅で3時間遅刻したときも怒れなかった。さすがに「寒いし、つらいよ」って文句は言ったけど、それ以上はなかったな。

 

R そこで怒れたら何か違ったのかな。

 

M 違ったかもね。夢の中でも怒ろうとするんだけど怒れないんだよ。相手が「本当にごめん、あのとき誕生日も祝えなかったし」とか泣きながら謝ってくるんだけど、私が傷ついてることは全然わかってないなって感じる。でも怒れなくて、「いいよ」って言っちゃう。夢の中で「あのときのあれってさ…」って切り出しても、相手に「そんなのあったっけ?」って言われるし。「そういうところも本当に好きじゃなかった。嫌いだった。あのとき、ああいうことされて本当に傷ついたし、覚えてないかもしれないけど、この何年もつらかったし、あなたのせいで行けなくなった場所もいっぱいあるし、なんでそんな風にあなたばっかり幸せになるの?」って言いたいんだよ、本当は。夢なんだから、相手がどう思うかとか考えなくてもいいし、私がスッキリするだけだから、言えばいいのに、言えないんだよね。絶対言えない。でも意を決して、文句を言おうとしたり、「夢だってわかってるけど、私は本当に好きだったよ」とか、何かけりをつけようとするところで大体目が覚めるんだけど、まぁタバダバ泣いてるんだよね。泣きながら目覚めて、朝から過呼吸になって。「やっぱり夢だったし、今回も何も言えなかったし、しんどいな」って思いながら朝を迎えて、泣いてるとメイクできないから頑張って泣き止んで、目を冷やして、メイクして、なんでもない顔で会社に行って、「おはようございまーす」って。会社の人に「もりたちゃん、最近どうなの、彼氏とかできた?」とか言われたら、「全然っすねー、早く綾野剛と結婚させてくださいよー」っておどけて見せて、そういうので無駄に心にダメージを食らい、帰ってお酒とか飲んで…。で、またその夢を見たらどうしようって思って寝るのが怖くなるから、不眠の時期に入るっていう。結構ハードだよね、そう考えると。

 

R めちゃくちゃハードだなぁ。

 

M で、相手にもう一回会ったら終わるかなと思ってたんだよね。そしたら仕事関係のセミナーで、たまたま去年会ったんだよ。そのときは「やっぱりあの人好きじゃないな」って思った。しゃべり方も傲慢だし、「俺はすごい」って考えてる感じとかを見ていると別れて正解だったって思ったんだけど、それも一瞬だったよね。

 

R そのときは自分に言い聞かせてみたけど。

 

M いや、言い聞かせたっていうか、本当に思ったんだよね。やっぱり、あのまま付き合っても幸せになれなかったって。

 

R 実際に会うと嫌なところも見えるんだけど、思い出として残ってる部分があまりにも好きだったから…。

 

M そう、その場でも会ったのは一瞬だったし。

 

R じゃあ本当に、良かったころのイメージの問題なんだな。

 

M それを越える何かがあればいいのかもしれないけど、激情にかられるような年齢でも無いしさ。「どうなってもいい!」とかならないし、仕事も大切だし。そこまで来ちゃうと人を好きになることも怖いし。だから付き合っても「きっと別れるんだろうな」って思う。「別れるじゃん、さよならじゃん」って。そう思っちゃう。

 

R 心配になってくる話だな(笑)。

 

M でもさ、生きてるから平気だよ。生きてればどうにでもなる。

 

R 死にたくはならない?

 

M ううん、なる(笑)。

 

R (笑)。

 

M しょっちゅう死にたくなるけど、でも、死んでもどうにもならないじゃん。生きてればどうにかなるから。意外と強い女だよ(笑)。弱いなりに強いからね、そういう傷を隠すために、また別の傷を作っちゃうんだろうね。

 

R 虫さされのかゆみを誤魔化すために他の場所をつねるように。

 

M それに近いかもしれない。

 

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傷つく前に、傷ついちゃえ

 

M (都庁を離れ、新宿駅へ向かいながら)女子高生短歌で、彼に対する私のスタンスを言い当ててるなって思った短歌があって。「幸せになれるだろうないつかまた会うとき君が不幸だったら」っていう短歌を見て(エリ・著「女子高生短歌!」)、「そういうことなんですよ!」と思った。

 

R 相手が不幸だったらいいなと思うの?

 

M 「私がこんなにつらい思いをしてるのに、なんでお前は彼女をつくって、普通に幸せに暮らしてるの!? なんで私だけつらい気持ちにならなきゃいけないの!?」ってすごく思う。でも、他人の不幸を願っているうちは自分も幸せになれないし、それ以上に、やっぱり好きだったから幸せにはなってほしいんだよね。「嫌なやつ!」って思ってたけど、結局嫌いになれないから。だって好きだったんだもん。でもさ、みんな、相手のことを考えずに、勝手に傷つけるじゃん。そういうとき、ちょっとだけ、「だったら私も傷つけてもいいや」って思っちゃったんだよね。

 

R 「お前らがその気なら私もやるぞ」っていうことか。

 

M 「私もそっち側の人間として生きてやるよ」って思ったんだけど…。でも結果、勝手に傷つく癖は抜けないからつらいよね。

 

R こっちは傷ついてるんだから、傷つける側にも回れないと割に合わねぇってことでしょ?

 

M そうそう。でも、人に優しくありたいとは思うんだよね。本当は誰も傷つけたくない。どんなに傷ついたって、それは私の痛みとして全部自分で受け入れるけど、私は人にされて嫌なことはなるべくしたくないって思う。今、結構やっちゃってるけど(笑)。でも、本当は自分の不用意な発言で傷つけるのも嫌だ。

 

R 「お前らが私を傷つけるなら、こっちもお前らも傷つけてやる」ということで感情のバランスをとる方法もあるけど、それを率先して選びたくないわけだよね。でも、そうなってくると、それ以外の方法で、勝手に傷ついている自分とうまく折り合いをつける納得の仕方が見つかってないって感じかな?

 

M だから「傷つく前に、傷ついちゃえ」って思っちゃうんだよ。思わぬところで傷つくから、余計に痛いわけじゃん。紙で手を切ってさ、気付いてないときは痛くないけど、気付いたときってめっちゃ痛いじゃん。人からもらう痛みってそういうもんだと思うんだよ。で、気になっちゃうから余計に触って傷口開いちゃったりもするし。だから、自分の予想外の痛みよりは、コントロールできる範疇で先に傷ついちゃった方が、つらくないんじゃないかって思ってる。

 

R ある意味、もりたが傷つきに行ってるのは自己防衛なんだ。自分から予想できる力加減の傷つき方をしておくっていう。

 

M そうしてちょっとダウナーに入ってからリカバリーした方が、まだ最終的には傷が浅いかな、みたいな感じ。だから今も自分起因じゃないところでつらいことがいっぱいあるからさ、この企画に乗っかっておいて、多少古傷をさわっておけばいいんじゃない? ってところもある(笑)。体調悪いときでも「風邪ひいた」って思うより「二日酔いなんです、これ!」って考えた方が、「治せる!」って思いこめるじゃん。それぐらいのニュアンスなのかな。

 

R あー、なんかすげぇ、もりたが分かった気がする。

 

M えー(笑)。こんなんでわかるの?

 

R いや、「なんで自分からそんなに傷つきに行くの?」と思ってたけど、それはわかった。自衛なんだね。

 

M そうだよ。

 

R 今日は、なるほどって思うことがいっぱいあったな。いやー…東京はつらい場所ですなぁ。

 

M 東京はつらい場所だよー。

 

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R あー、もうこの辺はクリスマスムードだ。

 

M やめてくれよ、今年もシングルベルだよ。

 

R シングルヘル。

 

M どうせ納期前で死んでるよー。

 

R 俺は常時ヘルだから。

 

M わかる。地獄だよね。そろそろクリスマスディナーとかで過ごす素敵な年がほしいなー。

 

R やっぱりそういうこと、やりたい?

 

M したくない? 様式美として。

 

R まぁねー。

 

M でも、別にいいかなー。家でファミチキ食べるから(笑)。